人生を賭けた転職に失敗した。
昨年9月、27歳の誕生日に彼氏と別れた。
彼は、ウジウジしている私が嫌いだと言った。
今の仕事が好きじゃなくて、本当はほかにやりたいことがあるのに、
文句ばかり言って、現状を変えるために動き出すエネルギーがないところが、
もう無理、と。
悔しかった。
変わりたいと思った。
動かなきゃ、行動を起こさなきゃと思った。
失敗が怖かったけれど、
やりたいことをやるために、
新卒とは程遠いこんな年齢だけど、頑張ろうと思った。
志望職種は教育行政職なので、公務員試験を受けることにした。
公務員試験は、膨大な範囲だった。
法律、経済、政治学や行政学など、なにひとつ事前知識のない、初学からのスタートだった。
気が遠くなりそうだったが、諦めなかった。
さぼりたくなったときは彼の言葉を思い出し、「変わりたい!変わらなきゃ」と何度も心の中で反芻し、自分を奮い立たせた。
憲法、民法、行政法をそれぞれ1か月で仕上げ、ミクロ・マクロを半月で仕上げた。
土日は外に出ず、人との付き合いも最小限にして家で勉強した。
わずかな有給休暇もすべて勉強に費やした。
それでも時間は十分ではなかった。
試験科目の勉強がひととりすべて終わったとき、もう試験直前期の3月末だった。問題演習時間はほとんどとれなかった。
試験に向けて一生懸命に勉強しているときは、試験勉強が苦痛に感じることもあったけれど、実をいうととても幸せだった。
目標に向けて努力することが、こんなにも気持ちを前向きにさせるものなのかと知った。
試験に受かれば、そして面接にも合格すれば、未来は変わるかもしれない。
幾度となくしたそんな妄想が、どれだけ私の心を支えていたことか。
6月、試験を受けた。
そして昨日、合格発表があった。
結果は、不合格だった。
今まで描いていた未来、何かが変わるかもしれないという希望が、一瞬にして失われた。
努力をすれば報われるという期待も、
自分はやればできる人間だと信じたかったプライドも、
すべてかき消えた。
曇った心に差していた一筋の光が、不合格通知によって、消えてしまった。
不安、失望、絶望。
これからどうしたらいいのか。
何を目指して、生きていけばいいのか。
来年また試験を受ける?
どうせまた落ちるだろう。
それに、1年がんばってまた落ちたら、私は私の頭の悪さを自分で認められるのか?
家族もがっかりさせてしまった。
私が転職できなかったことではなく、私が試験に受かる頭がないことに、だ。
みじめで、悔しくて、悲しい。こんな思いを来年もするのは、嫌だ。
結局私は、彼が嫌いだと言った「現状を変えられない、ウジウジした女」から変わることができなかった。
頑張ってはみたものの、やはり私はこんなものなのだ。
好きなことで生きている、キラキラした女の子には絶対になれないのだ。
勉強に費やして、27歳の時間を9か月捨ててしまった。
つまらない、未来のない事務職をのんびりとやっているうちに、あっという間に30歳になってしまうだろう。
自分を変えたい、未来を変えたいなんて、私には身分不相応の夢だったのだ。
夢を見ている間にとりかえしのつかない年齢になってしまわないよう、早く結婚相手を探してさくっと結婚しなければ。
私のような女には、立場の弱い女を家事奴隷にすることを望む男の言いなりになって、主婦でもやるのがちょうどいい。
自分の力で社会に貢献してみたいなんて、はなからお門違いだったのだろう。
それでも私は、目指す未来に向かって一生懸命に勉強をしていた、先月までの気持ちが忘れられない。
前向きで、楽しくて、苦しくも幸せだった努力の日々は、一生の思い出になるだろう。